国境は緑

飛行機から眼下に見る景色は忘れられない。まして国際線では地上から伺うことのできない風景を覗けるからだ。2017年6月23日朝の便で大連から成田に向かっていた。一番安く早いCA951便(中国国際航空)。昨日までの大雨と打って変わって朝から良い天気だった。ほぼ満席、中国人の旅行者だ。隣の夫婦はハルピンから日本に初めて行くとのこと。もう旦那の方は酩酊状態だ。ハルピンは遠い。大連に1泊し日本に向かうことになる。やはり大連は日本に一番近い窓口。飛行距離は1,700km、上海より若干近いが、偏西風から若干ずれるので時間的には遅くなる。下地図の通り、遼東半島の先端、渤海の入口、日本に向かうには朝鮮半島を越えなければならない。どこを越えるのか?

以前、北京から東京に向かうとき、眼下にソウルの街並みが見えた。首都を結ぶ線上に首都はあるものだと妙な感慨を受けた。中国と日本の間には朝鮮半島がある。歴史と文化だけではなく地理的な必然も覚えた。大連は北京ルートに比べ北朝鮮近くに位置する。まさか北朝鮮の上を飛ぶとは思わない。しかし、まっすぐであれば通ることになる。私は興味津々で黄海から陸地に向かう飛行機の下を見ていた。緑豊かな大地に道が一直線に走っている。人家がない。ただ緑。何度も韓国に行っているが、開発しきった街並みを憶えている。飛行機は更に飛ぶ。この緑から風景はグレーの世界に変わった。韓国の風景だ。整備された街並みが見える。なんと対称的なのか。国境は一直線。分かりやすい。昔、国境線を臨み、ー10℃の寒さの中戦車を見ながら冷たい眞露を冷めた肴で韓国人と飲み交わしたことを思い出していた。国境はソウルから近い。目と鼻の先である。中国の飛行機はお構いなしで、この国境を越え、韓国を抜け日本に向かおうとしている。今も戦争状態で、北緯38度線を境にいがみ合っている。この国境を両国の人々は越えることはできない。中国の飛行機には関係ない。これが日本の飛行機であればできない話である。北朝鮮と国交がないからである。

あれから3年経っている。何も変わってはいない。相変わらず休戦状態にある両国。あの緑の国境は今も変わらないのか。北朝鮮と韓国の境は夜の衛星写真で一目瞭然。夜の北朝鮮は真っ暗で際立っている。地球上に国境はない。人間が想定しただけのものだ。ただ大地に国の経済状況を色濃く刻み付ける。朝鮮半島は北にロシア、西に中国、東に日米と挟まれ、いつも揺れ動いてきた。何度も統一が叫ばれながら実際は前に進んでいない。かく言う日本であれ、ロシア、北朝鮮とは平和条約を結んでいない。韓国と良好な関係を結んでいるわけでもない。戦争は終わってはいないのだ。国はまず国境を確定しなければならない。しかし、国境は民族の長い歴史から見れば新しい線引きであり、概念に過ぎない。政治の道具になりやすい。国内の世論をまとめるのに外の脅威が一番の材料となるからである。いつの間にか国防費は鰻上りとなっていく。朝鮮戦争開戦から70年、まだ睨み合いが続いているこの国境は当時の米ソが決めたものである。この国境があるために1000万人と言われる離散家族を生んだ。この国境を越えるのは民族愛だ。もう社会主義、資本主義の論争は終わった。戦いで平和は生まれない。憎しみを生むだけだ。

韓国と北朝鮮を分ける国境はただ緑だった。空から見る国境は静かで、人も車も走っていない幾筋かの一本道のみの風景だった。私はいつも飛行機に乗るとき窓側をとる。これはときにささやかな時代の証人になりたいからだ。いずれ朝鮮半島も統一されるだろう。時代の流れに政治家は抗しきれないと信じているからだ。

投稿者: ucn802

会社というしがらみから解き放されたとき、人はまた輝きだす。光あるうちに光の中を歩め、新たな道を歩き出そう。残された時間は長くはない。どこまで好きなように生きられるのか、やってみたい。

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