ロウバイ

我が家のロウバイが満開。春を呼ぶ花として花言葉は「先導」。早春を彩る香り貴き花。甘い香りから英語では「Winter Sweet」。同じく香水のような沈丁花に先立ち一早く咲く姿が愛おしい。中国原産のクスノキ目の木で正確に言うと梅ではないが、華やかに花が咲く姿は梅のようだ。日本では蝋梅蝋のような透き通る柔らかい花を咲かせる。中国では臘梅。中国で云う臘月の旧暦12月に花が咲く12月と言うと年末のイメージだが、寧ろ旧年と新年をつなぐとき。けして終わりとはしない臘祭は収穫祭臘八粥はその年の豊作を祝う八宝粥。臘月は新年に向けたプロローグ。今中国ではこの臘月を迎えている。ロウバイは私にとっても日本と中国をつなぐ花だ

2009年米国に発したリーマンショックが中国ビジネスにも大打撃を与えていたころ私は開き直って蘇州の庭園を廻っていた。日本の本社はもう中国の子会社まで支え切れなくなっていた。私も日本に呼び戻されそうになっていた。逆らって中国に居座った。何せ金が来ない。払えない。売れない。正に三重苦。もう気が着けば旧正月が近い、蘇州も寒かったが、新春を迎える喜びに街中は溢れていた。正月は中国にとって一番大切な祝いごとだった。休日が少ない中国人が唯一長く休めたのが正月。そして豊かさを家族と共有する。家族と一緒に新年を祝う。正月を前に最高に賑わう街を散策し、何気なく庭園に入る。考えてみれば旧正月は日本にいつも帰っていたのでこの寒空の下庭園に入った記憶がない。庭園の冬は人もなく物悲しくて入る気もなかった。ふと気が着いたのが、甘く蕩けるような香り、そして冬空に映える淡いレモン色の花であった。名前を知らない。しかしどこかで見た。そうだ!日本のうちのお隣さんの玄関前に植えてある木だ。うちにいる女房に早速携帯で何という木か聞いてみた。案の定「知らない」と素っ気ない返事。日本ではあまり見ない木。中国人に聞く。”腊梅”と書いた。この””に引っ掛かった。燻製だ。燻製されたような梅?腊とは元々生贄を供え祀ることである。生贄が燻製に変わった。祀りは供物を収穫に対する神へのお礼として供える12月につながった。”腊月”は12月、旧暦12月に咲くのがロウバイである

中国は香りの国だ、沈丁花から花海棠梔子(クチナシ)、クスノキ木犀、年中木花の香りが漂っている。お茶もそうだが、まず香りを重視する。美味しいを中国語では”好香”と言う。木々の中でもクスノキは凄い、自転車で走っているとこの甘い香りに癒される。花ではない木そのものから漂ってくるから凄い。街路樹がクスノキであればずっとこの香に包まれて走ることになる。中国語で”香樟”と言う。樟脳の元と言えばわかってもらえるだろう。木犀は日本と違い黄色ではない、白、金木犀ではなく銀木犀になる。香りは一緒。芳しい香りだ。実は中国の桜も甘い香り、しかも鼻の先ほどの低い位置に咲く。日本のように見上げる高さに桜は咲かない。中国の桜は日本では桜桃になる。春を迎えた天津の花海棠の桜の様な美しさと香りも思い出に残る。遠い北国に春が来たんだと感じる。尚、沈丁花は朝鮮経由で来たのか、花を”げ”と言うのは韓国語、ムクゲ、レンゲもそうだ。中国では春になると丁子の花を飾る。沈丁花は香木の沈香と同じ高貴な香りを漂わせる。全て中国由来の花々だ。

中国での仕事を終え日本に帰ってきた。私の中に中国の思い出は”香り”として残っていた。香りを大切にしたい。先ず、香りのある花木を求め日本の野山、公園を歩いた。そして庭に植えていくことにした。梅、金木犀は元より庭の木。クスノキはまず無理であったが、沈丁花から花海棠、梔子を植えた。ロウバイは何処に。答えは秩父宝登山にあった。みごと!秩父鉄道長瀞駅から直接登れる標高497mの 山頂一帯、約15,000平方メートル、3,000本のロウバイの花が咲き乱れるロープウェイの駅前で売っていた苗木を買った。もう8年前。毎年大きくなり見事な花を咲かせるようになった。裏切らない花。宝登山には東京に拠点を構えている時はほぼ毎年登っている。これからも健康でいる限り毎春登り続けるであろう。そのくらい魅力ある山である。登るのが簡単だからなのだが。頂上で見上げる空は何処までも青く、空気は清廉。遠く眺める秩父の山並みも美しい。眼下のロウバイはレモンイエローの花を青い空に映えさせ、芳しい香りを風に漂わせる。因みに宝登山のロウバイを植えたのは秩父鉄道の駅員と聞く。観光の目玉として山をロウバイで彩りたかったと聞く。いい話だ。

毎年宝登山のロウバイの咲く時期は異なる。2月中旬を基本に考えればいい。宝登山のロウバイの開花時期は毎年異なる。開花状況は前もって下記のサイトで確認する必要がある。さもないと満開まで何度も登らなければならなくなる。私はめでたく瘋癲になったのでロウバイが満開になった天気の良い日に登るつもりだ。因みに私の遺言書に骨を粉にしてそっと宝登山の頂上に捲いて欲しいと書いてある。他にも庭、蘇州の橋から京杭運河にもと頼んでいるが、死んでしまった本人には分からないので、遺族がしてくれるかは疑問。女房は一度一緒に宝登山に登って膝を痛め、もう二度と行かないと言っている。大した山のうちには入らないのだが…ロープウェイで登ってもいける。

宝登山ロウバイ園

登って一番は宝登山神社奥宮の売店。焚火を囲んで80才過ぎて尚元気なおばあちゃんから頂く甘酒と焼きミカン、寒い中登って来て冷え切った体があっと言う間に暖かくなる瞬間だ。是非味わいたい。おばあちゃん今年もお元気だろうか。またお会いするのが楽しみだ。

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投稿者: ucn802

会社というしがらみから解き放されたとき、人はまた輝きだす。光あるうちに光の中を歩め、新たな道を歩き出そう。残された時間は長くはない。どこまで好きなように生きられるのか、やってみたい。

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