ウクライナ🇺🇦の夏祭り🍺イワナ・クパーラ、今年も日本🇯🇵で

2023年7月9日、梅雨は明け切れてていない。天気予報では祭りの時間には小雨が降る。雲行きも何となく怪しい。今年も日本で迎えるウクライナの夏祭り、2度目になる。昨年2月24日のロシアのウクライナへの軍事侵攻から戦禍を逃れてきた人々と日本在住のウクライナ人や支援者を中心に日本で初めて催されるようになった。昨年の祭りには100名以上のウクライナ人が集まり、歌い、踊り、支援を求める声が響き渡った。この祭りを今年からイワ・クパーラと呼ぶ。ウクライナ語に従ったようで、昨年はイワ・クパーラとロシア語に従い呼んでいた。イワナというとイワンという意味になり、けしてロシア語読みと変わる訳ではない。イワンというと世界史で習ったロシア帝国の礎を築いた皇帝の名、或いは小さい頃読んだトルストイの書いたイワンのばかを思いだす。しかし実際のイワンはイエス・キリストに洗礼を施した洗礼者ヨハネのロシア語名。キリスト教やユダヤ教、イスラム教においては、聖人の名を神から与えられて名乗る。ヨハネは聖書に記されたヘブライ語でYôḥānān、そこからヨーロッパ文化の流れに添い、ギリシャ語のΙωάννης(イオアンニス) 、ケルト人のゲール語のIan(イアン)からスラブ語のИван(イワン)へと変遷したといえば分かり易い。ドイツではJohannes(ハンスまたはヨハン)になり、イタリアではGiovanni(ジョヴァンニ)、フランスではJean(ジャン)、スペインでJuan(フアン)、オランダではJan(ヤン)、イギリスではJohn(ジョン)となっていく。ヨハン・セバスチャン・バッハジョン・レノンヨハネで結びつくことに不思議な感覚を覚え、ジョン・レノンの非業の死が、正義を唱え、正義に殉じた洗礼者ヨハネの最後と重なる。

イワナ・クパーラはロシア語で Иван Купала、ウクライナ語ではІванa Купала、東スラブ人の民俗祝日、古代からの民間伝統の夏至祭が、キリスト教受容と共に、洗礼者聖ヨハネの誕生祭ユリウス暦6月24日)に取り込まれて祝うようになる。この祝日の名称は、東スラブ語の「kàpati」即ち「水浴する・水に浸す→洗礼を授ける」という言葉に由来している。日本では夏至を祝うことも、浮かれたクリスマスは別として、キリスト教は程遠く、仏教神道信者としても宗教上の聖人の生誕を祝う祭りもない。しかし、何処か、夏を彩る日本伝統の盆踊りに近いものを感じる。何故だろうか?

お盆は中国仏教起源の盂蘭盆会。お盆の日、旧暦7月15日は仏教では安居が開ける解夏にあたり、僧侶を癒すために施食をし、父母や七世の父母の供養を行う。この供養を地域縁者で舞った念仏踊りが日本古来の歌垣の風習と結びついて盆踊りが生まれた。盆踊りは不思議なことに、いつしか先祖供養、更に国やその地域を超越し、民衆の拠り所へとなっていく。阿波踊り、よさこい踊りは完全に盆踊りを超えている。何故か?盆踊りには、人種、民族、宗教を超えて我々の心に訴えるものがあるからに違いない。音楽、歌、そして踊りには接するものに普遍的な愛をもたらす。これは音楽に合わせ一同に踊る一体感、人々を結びつけるパワーだ。これは民衆が勝ち取ろうとする平和・融和への祈りにも通ずるものがある。イワナ・クパーナにも民衆の祈りが託されている。権力者や為政者が抑えようとしても止まらない祈りの力がある。人類にとって自然は生きるための糧を提供しながら一方脅威でもあった。大雨の時もあれば旱魃の時もある。自然は気まぐれで、人類は翻弄されるのみだった。古代人は太陽を神とし、崇め、祈り、助けを求めた。人々が一体感を持つ祈りは韻を踏み、音楽が生まれ、更に音楽を体現する踊りが生まれた。

今年のイワナ・クパーナは昨年より規模が縮小したことを否めない。川崎市営の稲田公園、けして名の通った公園ではない。ただ、園内に小川が流れ、せせらぎを聞く多摩川沿いにあり、新宿から京王線一本で来られる穴場と感じる、緑溢れるこじんまりした公園、集まっているウクライナ人も昨年ほどではない。まず100名もいない。昨年は戦争勃発から半年も経っていなかったので、日本全国からウクライナ人が故郷を思い、集結した感があったが、戦争が長期化し、戦線も硬直化しているなか、日本全国に散らばった彼らは各地域でこの祭りをそれぞれに祝ったのではないか。寧ろ、生活に追われ、わざわざここまで来る余裕もないかもしれない。今回集まったのは東京の語学を含めた留学支援を受けた若年層が中心になったようだ。日本への避難民は約2,300人、1/5は20歳未満で、3/4は女性。若年層の女性が生きのびれば良い。避難民へのウクライナ国民の願いは、例え、国は滅びても民族の血だけは絶やしたくないのではないのか。ウクライナの人口は1992年には5,200万であったのが、2023年には3,200万へと2,000万も減っている。人口の4割近くが消えている。国内外に避難している人が今も1300万人超に上っている。国民の4割が非難民化していることになる。海外で一番逃れている先の国がロシアであることに驚かされる。これは戦線に置かれた住民のロシアへの強制移住の所為と推測できる。戦禍に置かれた国民の苦しみを表す実態がここにある。

ロシアの穀物の輸出相手国はほぼ中近東、アフリカで、大量に一度に運送しなければならないコスト勝負の穀物輸送は船便しかない。黒海が輸出の拠点になる。ロシアにとって黒海を抑えることが焦眉であり、良好な港のあるクリミア半島はその核心に当たる。しかもクリミア半島はタタール人からロシア帝国が奪い取った歴史もあり、ロシア系住民も多い。今更ウクライナに戻す訳にはいかない。一方、海のないウクライナにとっても黒海は重要な輸出の拠点。クリミア半島が奪われると死活問題になる。両国にとって黒海は正に生命線。更に、ロシアが制圧しているドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州は黒海をつなげる最短ルートにあり、しかもロシアが育てた工業都市でもある。全てプーチン大統領一人を悪者にしている風潮は歴史を見間違えるもの。全てが必然の結果になる。ただ、一つの重要な観点が抜けている。このロシア侵攻により、ウクライナの一般市民の置かれた状況を見る目。被害者は全てにおいて一般市民になる。彼らを救う道が閉ざされている。この戦争はいつ果てるともわからなくなっている。一般市民は国を捨て避難民にならざるを得ない。しかし、逃げられない農民はどうなるのか?翻弄されるがままだ。彼らを救う手立ては残っていないのだろうか?神に祈るしかないのか?

規模の小さくなった今年のイワナ・クパーラにはプロのダンサーはきていなかったし、演奏もなかった。ただ、昨年と大きく違うところがあった。それは踊りの輪に多くの日本人が入っていったことだ。

投稿者: ucn802

会社というしがらみから解き放されたとき、人はまた輝きだす。光あるうちに光の中を歩め、新たな道を歩き出そう。残された時間は長くはない。どこまで好きなように生きられるのか、やってみたい。