
警察庁の統計によると昨年夏の山岳遭難者に占める60歳以上の割合が遂に42%弱に。毎年総数共に減ってきている。コロナ禍を真面に受ける老人が登山を諦めたと言うことはあったとしても素直に嬉しいもんだ。還暦を越えると状況判断に狂いが生じ、反応が鈍くなり、危険を避けるための一歩が出なくなる。確実に天国に近づいている。山では一歩間違えば死が待っている。道を間違えれば永久にさようなら。暗くなり動けなくなれば獣が餌食。それにも拘らず山に向かう。山は老人にとって聖域。山に登ると天国を実感できる。最高の景色と空気、何処までも広がる無限の空。社会という雁字搦めの世界に耐えてきた。疲れた。下界の些末なことから離れたい。これ以上巻き込まれたくない。負け犬の遠吠えと言う勿れ。山は嫌なことを忘れさせる一番の薬。山頂での深呼吸ほど気持ちいいものはない。更に山頂でのビールほど美味いものはない。天にも昇る気持ちとはこのことだ。生きていることを実感できる。生きることは山に登ること。登山に嵌る人間はさもありなん。私も以前住んでいた長野県の元気な老人に山岳遭難者が多いのも肯ける。山を生活の一部とし、いつもぴんぴんころりを目指している。山に生きる。




しかし遭難死となるとけして恰好のいいものではない。家族に心配をかけ、山岳救助隊の出動は膨大な費用請求を生み出す。見つからなければ死として認められない。保険も下りない。7年間は行方不明扱いで死んだとは見なされない。山での死は惨めなものだ。死体は狸やキツネにより食い荒らされる。それが自然。助かりたいならヘリを呼べ。保険に入れ。事前通告せよ。一人で登るな、社会のしがらみを要求してくる。しかし本筋を忘れている。遭難を避けるために必要なのはまず自助努力。私も山と向き合って早7年、54才から始めている。人生の坂道を下り始めた頃から山を登り始めたズブの素人だ。実は死の恐怖を何度か味わっている。その都度別の登山者に助けてもらった。一人で登りながらいつも他の登山者に挨拶する。安全への情報を共有し合い、山では先ずお互いに助け合う。安全な登山の基本。そしてけして無理はしない。己を弁え矩を踰えず。素人登山はこれに尽きる。自分の能力を超える山には近付かない。富士山を見られれば十分。富士山は登るものではない。見るものだ。

更に遭難の原因を一つ一つ潰していけば安全な登山につながる。道に迷う、滑落、転倒、病気、疲労が遭難原因の85%を占めている。危険予知と回避ツール、体調管理こそ一番大事。私の登山の流儀はここにある。老人が如何に山に立ち向かうか。
危険予知と回避ツール:君子危うきに近寄らず。晴れた日の日中に安全な登山道をまっすぐのんびりゆっくり歩いていれば遭難することはない。ただ、過信は禁物。相手は自然であり、臨機応変に対応しなければならない。生きる知恵が必要。危険あれば回避ツールあり。高齢者の遭難が減っている理由としてツールの進化がある。まずインターネットで状況把握が容易になってきている。道、天候の状況が事前に容易に把握できるようになった。更に装備の軽量化、衣服からリュック、靴、ストック全て軽くなってきている。筋力の低下を補うに充分だ。サプリメントの進化、体調の維持、回復に欠かせない。老人登山を助けてくれている。
①事前情報:登山は登る前が一番重要。ある意味登る前に勝負が決まっている。あらゆる情報をインターネットを通して入手し、いつ、どの山へ、どのルートを,行きと帰りの電車時刻まで想定する。この情報は全てスマホに登録する。インターネット情報ではまずメジャーな山を探す。登山道が整備されている。更にヤマレコ、あるいはヤマケイオンラインの最新情報を確認する。気を付けなければならないのはけしてトレイルランの記録やプロ並みの登山家の記録を参考にしないこと、同レベルの登山者の記録だ。登山に要する時間が読める。これで行きと帰りの時間の目安がつけられる。古い情報を参考にするとルートが自然災害で通れない場合がある。これが要注意。一度川苔山でやってしまった。ルートの入口の停留所に向けバスに乗ろうとしたら、そのルートは通れないと運転手に教えてもらって初めて知った。全ての計画がおじゃんになる。1から….
②スマホで登山道確認:スマホは片時も手放せない、然もすぐ取り出せるようにしておかなくてはならない。リュックの前面にあるサイドバックの左側に必ず収めることと決めている。老人は決めたところにしまわないと探し回る悲しい性がある。いつもお腹にスマホを感じているのでなくすことはまずない。スマホは昨年12月に最新のiPhone11に買い変えた。理由は登山時恐ろしいのが電池切れ。実は昨年11月金時山に登る際、古いスマホが電池切れを起こした。下の写真は頼んで他の登山者に撮ってもらったもの。スマホはパスモ、財布、カメラ、GPS(道先案内人そしてルート記録)である。特に道に迷った際、スマホ頼り。事前にスマホのアプリのヤマップに登る山をダウンロードしておくと自分が登山ルートに沿って歩いているか確認できる。これは別の登山者の女性に川苔山山頂で教えてもらった。今でも感謝している。何度もヤマップに助けてもらっている。この機能は電池を食うので補助バッテリーを必ず持っていく。切れたらお終いなのだから。山には様々な道が交錯している。何故なら、山は登山者のためにだけあるのではない。日本では必ず持ち主がいる。忘れてはならない。山を管理するための林道。登山ルートと交錯しているため、間違って入ってしまう。実際、登山者は他人の庭を勝手に歩いていることを忘れてはいけない。山の持ち主が登山者を向いていれば道を整備して頂けるし、そっぽを向かれたら危険になる。登っていると自然に分かるものだ。

③登山の日:一番の条件は天気である。山の天気、特に富士が見たければ、当日の富士の天気を優先する。私は晴れた暖かい日しか登らない。遊び人の特権である。景色を堪能できない登山は空しい。然も晴れていれば安心安全だ。曇りの日は日暮れも早くなり、早く下りなければならなくなる。雨の降る確率も高くなる。山の天気は気まぐれだ。雨の登山ほど危険なものはない。体温を雨は奪っていく。雪や氷点下の寒い日も登らない。何かあったら命にかかわる。零下ではスマホは液晶なので使えない。何より年寄りには致命傷になる。また平日を優先する。土日、休日は働く人のために山はある。人込みで頂上で休む場所が見つからないのが寂しい、然も一人のんびりしたいではないか。そして次の登山には少なくとも三日は空ける。連日登山は避ける。老体にはメンテが必要。必ず節々が傷んでいる。頑張った後、体を休ませることが長持ちのコツ。もう膝が弱っている。悲鳴を上げている。
④スケジューリング:基本は朝一で山に向かうことだ。朝の方が山は晴れていることが多い。早起きは三文の徳だ。老人は朝に強い。早く出発した方が何か起きた場合行動の修正が効く。今までのミスで一番情けなかったのが、電車を間違えて乗ってしまったことだ、別路線に乗ってしまった場合、通勤時間帯であれば電車の本数も多い。早く電車に乗れば、まだ空いているし、通勤客の邪魔になりにくい。遊びに行く人間が邪魔することは忍びない。リュックサックは混雑した駅構内や電車では迷惑だ。それでも移動は電車さらにバスを基本としている。車では時間が読めないから。通退勤時の道路の混雑は堪らない。これだけで疲れる。特に丹沢方面は道路が混む。休日祭日一番の理由は車で行くと酒が飲めないからだ。早く山に入れれば、帰りも早くなる。早く帰る方が電車は空いている。退勤時前を目指す。安全な登山の鉄則は早く登って早く下りる。早く登れば心に余裕ができ、安全に登れ、頂上で体を休め、のんびり風景も楽しむことができる。ビールを飲んでも冷ますことができる。下りるのが遅くなると山は怖い。夕暮れから日没にかけての時間が短い。あっと言う間に暗くなる。山の暗さは恐ろしい。足元が見え難くなると道を間違えたり、滑落、転倒の危険性を増す。遭難の危険性は闇に潜んでいる。

⑤熊は怖い:熊には上高地で二度出くわしている。尤も襲われてはいない。しかし、用心に越したことはない。リュックに小学生の護身用ブザー(千円くらい、ドンキで買った)を付け、イザの時用のドイツ製コショウスプレー(アマゾンで購入4,100円、高い。効果は使ったことがないので分からない。)を忍ばせている。(やはりアマゾンで1,388円で台湾製ブザーを購入、誤作動が生じ、電池が外れやすいし、電池切れを起こしたので使うのをやめた)、鈴は道中煩いので使うのをやめた。ライトも脅しには効くらしい。必ず持ち歩いている。

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体調管理:季節、日によって体調は変わる。暑い日、寒い日もあれば、いい日もあれば悪い日もある。自然が相手。特に年寄りは最悪の場合を考えて準備し、登山中、最良の体調にもっていかなければならない。準備として最適な登山服、装備、水、食事、サプリメント、薬、登山の後の体のメンテ、全てが重要。年を取って来ると筋肉痛が後から襲ってくる。これが辛い。また真夜中足が攣って何度も起きることが度々あった。今から8年前くらいか、八ヶ岳を登っている際、一人登る年長の山女から教えて頂いた。山登りの三種の神器はサプリメントとインナーウェアとストック。これが落ちてくる筋力を助けてくれると。老人にとって筋力の衰えが一番きつい。これを補うのが肉体を補強するツールだ。
①登山着:冬は重ね着で温度調整を行う。体は登れば熱くなるが、止まれば寒くなる。薄手のダウンが軽くて小さくたためていい。夏は発汗性で勝負だが、春秋が難しい。温度差が激しい。温度差を計算してウェアを選ばなければならない。何れにしてもインナーが決めてになる。筋肉の補助であり、保温性、発汗性、快適性が要求される。年を取るとどうも体温調整機能が鈍ってきている。インナーの助けが重要になる。
②装備:まず一番大事に10年以上使っているのがノースフェイスのリュック。背中にメッシュがあり、蒸れを防ぐ。軽い、体にフィットする。両サイドにストックが固定できるリングと紐、合わせてコーヒーカップと小学生が護身用に引くと鳴るブザーを付けている。熊遭遇や遭難非常時を想定。前面両側のサイドバックには家の鍵とマスク、スマホ。そして、高低差の大きい玄人向け登山用ストック。レキのトレッキングポールを使っている。握り具合が違う。軽い、強い、上り下り両方で使う。安心安全、スピード、バランスの確保、疲れてヘロヘロ、フラフラになったときの体の補助、必ず2本、寸法も決めてある。年を取り弱ってる足腰には必需品。転ばぬ先の杖。手袋を装着し、しっかり握って使う。若い山女が格好のみで使ってるのを見ると羨ましくなる。飾りではない。本気で使うのだ。熊に襲われたときは武器にもなろう。
③水:ついつい摂り忘れるのが水、水は体の熱を取り除き、体温を調整してくれる。喉が乾く前に喉を潤さなければならない。これは中国に駐在していた時に中国人が教えてくれた。いつもマイボトルでお茶を飲んでいる。朝起きがけの白湯も欠かさない。喉と腎臓のためだ。水は命。特に老人には適度の水の摂取が必要だ。老人は枯れている。以前はボトルに入れ、リュックに入れていた。しかしいちいち立ち止まってリュックを下ろし、開けて、ボトルを取り出し飲むのが面倒だった。ボトルは嵩張るし、荷物にもなる。ついつい飲む回数が減る。これも二子山で中国人の登山者がやっていたことを真似することにした。2ℓのウォーターバックにチューブが装着してある。チューブにはバルブが着いていて調整ができる。リュックにバックを入れ、チューブをショルダーに止め、飲水口を噛むと水が吸える。水を舐めながら登る。唇をいつも湿らせておけば良い、大量に飲むことはあまりない。体温上昇を抑える意味で効果がある。バックは平たいので嵩張らない。水が無くなるとさらに平たくなり軽くなる。ボトルが要らなくなるとリュックも隙間が増える。これがいい。スマートだ。年を取ると荷が軽いのが一番。水は水道水である。一度沸かした水がいい。カルキがとぶ。
④食事:朝早いのでコンビニでおにぎりとお茶を買って車中で食し山に向かう。おにぎりは3個と決めている。これは経験からで、これで昼まで体力が持つ。時間的に駅そばもしくは牛丼屋の朝定が食べられればこちらを優先する。温かい方が体にいいし、コスパも寧ろいい。360円で栄養のバランスもとれている。朝食は基本、登る前には必ず飯である。ギアの掛かり具合が違う。老体のエンジンには燃料がまず必要。
⑤サプリメント:登山開始時に飲むのがエネルギー補給ゼリー、老体への着火剤、そしておやつはバランスパワーのプチケーキ、薬屋で買っておく。これは朝早いため必需品。更に、少々高いが、帰還後家で飲むコンドロイチン、疲労回復を図り、関節痛対策だ。友人はセサミン錠剤を飲んでいるようだが、私は酒の抓みにセサミンを食すようにしている。体のメンテはサプリメントからと思っている。
⑥薬:必ず携帯するのは、下痢止め、整腸剤、喘息薬、風邪薬、痛み止め、消毒スプレー、バンドエード(大・小)、ムヒ、痒み止め軟膏、ワセリン、特に重要なのが、コムレケアである。ゼリーと錠剤、両方を持っていく、2袋は入れておく、急な攣りで困った方に遭遇した場合を想定。以前、丹沢山を下りていた際、ご老体の登山者がやはり以前の私同様、急な足の攣りに襲われ、動けないでいた。早速このゼリーをお渡しした。初めて飲む方は効きがすぐのようで、感謝され下りていかれた。他の人に助けられたらまた他の人を助ける。これが山のルールである。 登山から帰り、筋肉痛に襲われたら、我慢しないで、湿布「ハリックス55」を患部に貼る。痛み止め「ロキソニン」を飲む。次の日に温泉「お風呂の王様」に行き、マッサージをしてもらう。夜攣れば、コムレケア錠剤を飲む。これが登山を長続きさせるコツと思っている。常に痛みに耐えてはいけない。戦って乗り越える、するとまた登ろうと思えるのだ。
遺す:山を登っていくと同時に天国への階段も同じように登っている。心臓はいつ止まるか分からない。もう精神も身体も同様にすり減っている。充分に生きてきたことに間違いはない。あと十数年で、もし生きていたとしても足も体も思うように動かなくなる、脳の衰えも進み、ボケて何もかもが分からなっていくだろう。だから今山を楽しむ。そして遺したいものがある。生きた証である。存在としての自分は消えていく、しかし、自分が伝えたい想いは後世に遺したいと思う。登山の情報はヤマレコに、そしてFacebookに載せるようにしている。特にヤマレコではいつも情報を参考にしているのでお礼の意味も込めている。一方、自分の足跡が積みあがっていくのも楽しみだ。百名山踏破なんてケチなことはしない。登りたい山に登れればいいと思っている。そして生きて元気な限り、このヤマレコを頼りにこつこつ山を登れればいいのではないか。今日も今から山に向かう。いい天気なようだ。山頂でのビールが待っている。青梅駅近くに雰囲気のいい喫茶店があるようだ。さあ着替えて向かおう。
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